私がFileMakerでシステムを開発するようになったきっかけでもある、父が経営するデイサービスでの事例に多くの方が注目していただいています。
カンファレンスでこの事例についてお話したときに、システムの開発で難しいのはむしろ開発に着手する前なのだ、といったことをお話しました。
今回はシステム開発に着手する前の、業務改善の取り組み方をもう少し掘り下げてみたいと思います。
システム開発は、要件定義→設計→開発→テストの要素でできていますね。
いきなり開発を始めるのではなく、要件定義が社内システムの肝ですよ、ということもそうなのですが、それ以前のIT企画までの部分まではユーザー企業内でできることが多いです。
業務改革のサイクル
業務改革、業務改善は現状を否定することではありません。
世の中は日々変化していますから、業務だけがそのままで良い、ということはどんな会社でもないと思います。業務改革は問題点や課題があるから取り組むものというだけではなく、新しい価値を作っていくために取り組むことです。
ただ、〇〇が流行っているから取り入れよう!といったスタートではうまくいかないでしょう。
- 業務の全体像を把握する情報を集め
- 事業全体の戦略・施策を立てる
- その中でITが手段として適していることが要件定義の元ネタに
ここまでがIT企画の前に必要な下地になっています。
業務の全体像を把握する情報を集める
そもそも業務の全体像を把握するための情報を集めるのが大変という会社も多いのではないでしょうか?
アナログなやり方でも、業務の全体像を把握する情報が集まってくる仕組みがあって、それを元に施策を考えることができているとすれば、ITツールを導入をしているのにデータを活かせていない会社よりもずっとDXに近いと思います。
アナログなやり方では追いつかないくらいデータが多かったりデータ構造が複雑な場合は、データ構造をモデル化して業務の中で自然とデータが取れるように、ということも社内システムを構築することのひとつの目標になると思います。そこが最初のメイン目標になる場合、社内システムの構築・安定運用がゴールではなく、そこがある意味スタートラインなんだ、という意識で取り組むと良いと思います。
全体を俯瞰するために、まずビジネスモデルってなんだっけ?といったことから始めてみても良いと思います。
事業全体の戦略・施策を考える
戦略という言葉が出てくると、胡散臭く感じる方もいらっしゃるかもしれません笑
システム開発をしてほしいだけなのに、なんでそんなことまで、とも思われるかもしれません。
しかし、社内システムは業務に大きな影響を与えうるものなので、ユーザー企業が”何を大事にしているのか”ということがわからないと、ちんぷんかんぷんな社内システムが出来上がってしまいます。
難しく考えず、まずはああしたい、こうしたいといった希望を出していきましょう。
例えばこんなことでOKです。
- お客さんに別々の社員がそれぞれ同じ質問をしなくて良いようにしたい
- お客さんをもっと増やしたい
- 担当者が休みでも、他の社員が対応できるようにしたい
- ある商品を購入したら、それが次の商品の購入を促すものにしたい
ITで解決できそうなことに限定しシステムへの要求を出していくと、ユーザー企業内で”ITで解決できそうなこと”と思われていることに対してしか要求を出すことができません。
しかし、全社的なビジョンを開発者にも共有していただければ、”こうすれば、(ITで解決できるとは思ってなかった)その課題も解決できそうですよね”と新たな視点が見つかることがあります。全体の戦略や施策から、”こういうことも求められているんじゃないでしょうか?”と言語化できなかった要望が明らかになることもあるかもしれません。予算やスケジュールが決まっているとしても、まずは一旦”こうしたいよね”という希望を吐き出してみると、それがシステムへの要件定義のネタになります。
希望を吐き出しきったら、それらを抽象化していきます。
そうすると、自ずと全体の戦略や施策やそのためのタネのようなものが浮かび上がってくると思います。
システム開発プロジェクトの立ち上げ
業務全体に関する情報が出揃って、やっとシステム開発のプロジェクトを立ち上げる、という段階になります。
開発者に依頼する前に、プロジェクトのコンセプトや優先事項をある程度決めておくとさらに良いです◎
社外の人を巻き込んだプロジェクト
ここまで開発者に依頼する前にやっておくと良いことをお話してみたものの、”社外の人を巻き込んでプロジェクトを立てる”という経験がないとこのように段取りできない場合が多いのではないでしょうか?
アレグロペンギンでは、ここまでの段取りをユーザー企業と確認し、要件定義の前の準備から伴走しています。
特に、社内システムの運用は安定してきてさらなるIT企画を考える段階では、”ここからが本番ですね”という意識を共有しています。
システム運用により明らかになったデータが示すことは何か、データをどう活用していけば良いか、といったことから経営企画、IT企画を考えるためのチーム作りもお手伝いしています。
ITとビジネスがうまく繋がり、業務改革のサイクルが回り出すための最初の力はこうしてIT側から添えてあげるのが一番効果的なのではないかと思っています。