中小企業白書によると
ITの導入・利用を進めようとする際の課題として、”コストが負担できない”に並んで
”導入の効果が分からない、評価できない”
のポイントが高いようです。
https://www.chusho.meti.go.jp/
確かに、効果の評価は難しいですよね。
発注する側にはそのシステムの技術的価値はわからない場合が多いですし、やってみないと効果がわかりません。
システム開発の費用って高いんじゃ?
見積もりをとってみて、システム開発ってこんなに高いのか!と驚かれた経験のある方も多いかもしれません。
FileMakerを軸に開発する場合、コーディングを伴わないため比較的安価ですが、ホームページ制作と比べると高いと感じる方も多いかもしれません。
マッチに比べてコンロやIHは高い
私のお気に入りの例えです。笑
テクノロジーによって人の行動が変化することを、情報⇄火起こしに置き換えて考えてみます。
レストランを経営していて、火を起こすのに周りのみんながマッチを使ったり薪を割っていたら、IHクッキングヒーターを持っている人は大きな利益を得ることができます。
もちろんコンロやIHはマッチより高いですが、大きな利益を得ることができますよね?
コンロやIHの導入は戦略あってこそ
- 今まで火を起こすのに使っていた時間をレストランの料理や接客を強化するために使う
- 火を起こすのは苦手だが、料理の腕は一流!という人を雇う
- 美味しいお料理を提供しつつ、余った時間や人手を使って、街でビラやクーポンを配る
などなど… コンロやIHといった戦術を使った、色々なアイデア(戦略)が思いつくでしょう。マッチよりも高額であったとしても充分良い買い物になると思います。
ITは戦術であり、プロジェクトの価値は戦略次第
コンロやIHが普及している世の中で暮らしている私たちはこうしたアイデアがすぐに思いつきますが、マッチや薪を使った火起こししか経験のない世の中では、なかなか難しいかもしれません。コンロやIHを導入するだけでは投資に対してのリターン(効果)が得られないでしょう。
利益をあげる戦略とは?
例えば、顧客情報が用途ごとにバラバラに管理されているからとりあえず一元管理したい、というお悩みがあるとして、それがシステム化したところでどうなるか?
仕事がスムースになって楽しい!
業務効率化!
まずはそこからかもしれません。
もう一歩進んでみると、顧客管理システムによって得られる独自の顧客リストは戦略次第で大きな利益をもたらします。
顧客管理システムを活かす方法をいくつかご紹介します。
見込み客を絞り込んで、効果的に営業をしていく
新規顧客獲得のために、手当たり次第声をかけていくわけにはいかないですよね。
まずは、どのようなセグメントの既存顧客が積極的により多くの商品を購入しているかを調べ、そのような人に向けてセールスしていくと思います。
事業によってどんな顧客で絞り込みたいか?は違うので、独自のデータベースを構築することはとても意味のあることです。
例えば、デイサービスでは介護保険の限度額いっぱいを使ってご利用いただいている方の共通点はどのようなものか?
ご利用者さんの住所や趣味、他に属しているコミュニティ、ご家族の住所や職業、ケアマネージャーさんの事業所、主治医など…
データベースによって、印象や感覚にとらわれず共通点がわかるようにします。
それを参考にして、どこに広告を出すか?どこに営業しに行くか?決める、あるいはそのような見込み客が求めているような情報を発信するなど…
効率的に営業活動ができます。
既存の顧客とのコミュニケーションをもっと親密なものにする
顧客とのコミュニケーションを活発化させ、ちょっとした行き違いを防ぎます。
会社の規模が小さいうちは記憶を頼りにした気配りで顧客との信頼関係を維持していけるとしても、会社が大きくなるとフォローが追いつかなくなったり、配慮が足りなかったり忘れていたりするこもあるかと思います。
業務の流れの中で適切にコンタクトが取れるように仕組み化することで、必要なタイミングで漏れなくフォローでき、顧客の安心感に繋がります。
デイサービスでは、ご利用者さんの記録から担当ケアマネジャーさんへの連絡が簡単にできるようになると、ちょっとした変更や出来事まで報告されるようになります。
ケアマネージャーさんにとってはマメに連絡をくれるというのは信頼感に繋がります。これはもちろんご家族に対しても同様です。
どのスタッフが電話に出ても、社内で情報が共有されているのですぐにご様子をお伝えすることができます。シフト制のサービス業には、すぐに検索できるデータベースが必須となってくると思います。
離れていった顧客にも連絡をとり、次に繋げる
顧客が離れていく原因には以下の3つの場合があります。
1.サービスや商品に不満がある場合
2.他のサービスや商品に乗り換えた場合
3.事情がかわり、サービスや商品が必要なくなった場合
どの場合でも連絡をとることは効果的です。
特に3.の場合(事情がかわり、サービスや商品が必要なくなった場合)については介護に関連する話なのでお伝えしたいと思います。
デイサービスでは、サービスにとても満足していても残念ながらご逝去されることもありますし、施設入所がやむ終えない状態になることがあります。
しかし、これまでご家族やケアマネジャーさんと築いてきた関係をここで終わらせる必要はないと思います。
私は飼っていた犬を看取ってくれた獣医さんが1年後に花束とお手紙を下さったことを数年経った今でも覚えています。
また動物を飼うことがあったり近隣で獣医を探している人がいたら、その獣医さんを紹介するでしょう。
これはデイサービスにも応用できるのではないでしょうか。
また、1.や2.の場合(何かしらサービスに不満があった場合)でも一定期間を置いて連絡をとることは有効です。自社の問題点を究明していくことだけでなく、うまくコミュニケーションをとることができれば戻ってきてくることもあります。
IT投資によってハッピーになるのは実は経営者
もしかしたら経営陣よりも煩雑な記録作業や共有に困っておられる現場の方が、システム導入に対して積極的かもしれません。
しかし、システム導入に経営戦略が組み込まれると働く人がハッピーになるだけでなく、会社の売り上げにも貢献します。
IT活用を導入した企業のほとんどは効果が得られ、労働生産性が向上したという結果も報告されています。
中小企業白書にはIT活用の成功事例やデータから成功要因を分析した結果も載っていますので、改めて読んでみると新しい発見があるかもしれません。